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レイボヴィッツの「はげ山の一夜」 |
幻想の余地のないおどろおどろしいはげ山(戻る)
レイボヴィッツについては興味があったもののこれまで全く聴く機会がなかったため、RCAグランプリ"1000"クラシカルの1枚としてキズ盤で100円で転がっていたものを思い切って買ってみた。 まずこのキズの状態だが、盤面上のわずかなひっかきキズであって音には全く影響がない。 なぁーんだハンターではこんなのをキズ盤としていたのか、これからはキズ盤でも逡巡せずに購入しよう... これはそんな面での儲け物であったが、演奏はまたこれ以上の儲け物であった。 これほどまでに「はげ山の一夜」を面白く聴けたものはない。 同じくRCAグランプリにはライナー/シカゴ響のストイックな名演奏もあるのが、こちらはおどろおどろしいまでの妖気漂う迷演奏なのである。 さすが12音技法の作曲家でシェーンベルグやウェーベルンに師事し、ブーレーズの12音技法の師でもあるレイボヴィッツの解釈が冴えている。
全般的に早いテンポで展開しており、またオケのロイヤルフィルも指揮者に遅れないように必死でついてきているため息をつく間もないような演奏なのだが、実際にはライナーのと比べると20秒ほど遅い(レイボヴィッツ=10:36 ,ライナー=10:12)。 基本的にはリムスキー・コルサコフの編曲であるが、要所にレイボヴィッツの独創がちりばめられている。 まずは冒頭の弦楽器のキザミの部分にスネア・ドラムがタタタタタ・・・と畳み掛けてくる。 怖さ・不気味さが倍増しておりもうここでノックアウト状態になる。 そして悪魔の饗宴の場面では金管ファンファーレが何故か最初の一音だけパァーと鳴って即座に消えるのに吃驚する。 あるべきものが無い恐怖がここにある。 そしてさらにこの場面のクライマックスではウィンド・マシンがヒューヒューと唸りをあげる。 ここには幻想的なはげ山のイメージは消し飛んでおり、これでもかこれでもかと音楽が押し寄せてくる。 言葉で書くとゲテ物演奏のようだが、実際に耳にしてみると、そうとは言えない魅力がある。 単なるウケ狙いではないリアリティを感じさせるはげ山なのである。 レイボヴィッツのベートーヴェンの交響曲全集があるとのこと。 どのようなリアリティをもって演奏するのか今度はこれを聴いてみたい。