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ケンペンの英雄交響曲 |
白熱するベルリンフィル(戻る)
このところ軽い音楽ばかり聴いていたので、脳天をガツンと一発やられたような気分です。 白熱するベルリン・フィルによる凄まじい英雄交響曲でした。 パウル・ファン・ケンペンは知る人ぞ知るオランダの名指揮者ですが、第2次大戦中にドイツ国籍を取得してナチスへの戦争協力をしたことにより、戦後の活躍の場が狭まってしまったまま1955年に没しています。 この英雄交響曲は1953年にベルリンで録音されたものですが、ここでもケンペン特有の振幅の大きな力感あふれる演奏を聴かせてくれています。 ベルリン・フィルというとカラヤンの棒のもとにインターナショナルなオーケストラになってしまいましたが、一糸乱れずにきちっと音楽を仕上げている面は「さすがベルリン・フィル」と思わせるのですが、必死で食らいついてくる感じもして、ベルリン・フィルがこれほどまでに燃えるオケなのか、とも思わせる白熱した演奏になっています。 モノラル録音で、音もちょっと古い感じがしますが、そんなことはあまり気にならなくなるほどの素晴らしい演奏です。
第1楽章の冒頭はガンガンと打ちつけてきます。 コーダも振幅の大きな演奏で重いリズムながらダイナミックに燃えあがっています。 ティムパニの音は遠いのですが、そんな鳴り物で誤魔化さないほどの気迫のこもった演奏です。 第2楽章も重い歌いまわしなのに引きずるような感じが全くしませんね。 第3楽章のスケルツォも重厚ですがリズムをスパスパと切る感じでテンポよく進みます。 ホルンのトリオの前にちょっと間があるのには「はっ」とさせられました(テープを繋いだのかって思えてしまう感じ)。 終楽章も振幅の大きな演奏でベルリン・フィルの巧さが随所に光っています。 重厚でかつスピードもある演奏なのにスケール感を全く損なうことはなく、暖徐部分ではたっぷり歌う、そんな自在な演奏でフィナーレに向って進んで最後は一気に燃え上がって幕となります。 単に男性的で豪快な演奏、とだけでは語れないパウル・ファン・ケンペンとベルリン・フィルによる気迫のこもった英雄交響曲でした。
なお、この演奏は1954年にフランス・ディスク大賞をとっているそうです。 国粋主義的な匂いのする同賞を敗戦国の演奏が取るなんて・・・ と思うのは少々考えすぎでしょうか。